再生ペレットの見積書を前にして、手が止まった経験はないでしょうか。
価格は魅力的です。
環境面での説明もつきます。
それでも「品質」の二文字が引っかかって、稟議に回せない。
はじめまして、関直之と申します。
大学で応用化学を学んだあと、北関東の樹脂成形メーカーで生産技術を4年、資材調達を7年ほど担当しました。
2019年に独立して、いまは素材と環境まわりの記事を書いています。
在職中、再生材の採用は何度も検討しました。
そのたびに現場から返ってきた反対意見が、だいたい3つに集約されるのです。
「色が合わない」「臭う」「割れる」。
当時の私は、この3つをまとめて「再生材だから仕方ない」と処理していました。
いま思えば、これは思考停止です。
色ブレと異臭と強度低下は、それぞれ原因が違います。
そして原因が違うということは、確認すべき工程も違うということになります。
この記事では、その3つがなぜ起きるのかを、公的機関の分析データや学術論文まで遡って分解してみます。
再生ペレットの品質を「何となく不安」から「どこを見れば判断できるか」に変えるのが狙いです。
再生材は作られているのに、国内では使われていない
まず現状の数字を押さえておきます。
一般社団法人プラスチック循環利用協会が公表した2023年のマテリアルフロー図によると、国内の廃プラスチック総排出量は769万トン、そのうち有効利用されたのは89%にあたる688万トンでした。
内訳を見ると、マテリアルリサイクルが22%、ケミカルリサイクルが3%、サーマルリサイクル(エネルギー回収)が64%です。
つまり、樹脂として生まれ変わっているのは全体の2割ほどにとどまります。
さらに気になる数字があります。
同じ資料によれば、マテリアルリサイクル品の約70%が輸出に回っているのです。
プラ屑として54万トン、再生原料として71万トン、合わせて125万トン。
国内で再生ペレットは作られている。
しかし、その多くは国内のメーカーに買われず、海を渡っている。
この構図の背景に、冒頭で挙げた「色・臭い・強度」への不信があると私は見ています。
一方で、状況は動き始めました。
経済産業省の資料によれば、改正資源有効利用促進法が2026年4月1日に施行され、自動車・家電4品目・容器包装の製造事業者等に対して、再生材の利用に関する計画の提出と定期報告が求められることになりました。
「使うかどうか」を検討する段階から、「どう使うかを説明する」段階に移りつつあります。
だからこそ、品質の仕組みを理解しておく価値があると思うのです。
色ブレの原因は、着色工程ではなく原料の履歴にある
色の話から始めます。
現場でロット間の色差が出ると、最初に疑われるのはマスターバッチの分散不良や撹拌の不足です。
たしかにそれも要因ではあります。
ただ、再生材の場合はもっと手前、原料そのものに色が残っているケースが少なくありません。
顔料は、樹脂を溶かしても抜けないのです。
産業技術総合研究所が2025年7月に公開した再生プラスチック含有化学物質の分析および健康リスク評価のためのハンドブックに、実測データが載っています。
同研究所は2023年4月から10月にかけて、関東を中心とした再生プラスチック製造事業者13社にアンケートを行い、そのうち9社の施設からPP・PEを中心に46試料を収集しました。
そして赤外分光分析(FT-IR)と蛍光X線分析(XRF)で中身を調べています。
結果として、次のようなことが分かりました。
- PE・PPを主成分とする再生ペレットに、PSやPETの混入が示唆された試料があった
- 別のPE主成分ペレットでは、充填剤の炭酸カルシウムが再生過程で除去されずに残っていると考えられた
- カドミウムは38試料中1試料で、RoHS指令の最大許容濃度である100mg/kgを超過した
このカドミウムの事例が示唆的です。
同ハンドブックによれば、この試料の原料は産業利用済みのパレットで、着色剤に使われる黄色顔料(カドミウムイエロー)の混入が可能性として考えられる、とされています。
前の製品に使われた色材が、そのままペレットに残る。
色ブレとは、原料ロットごとに「前の人生」が違うことの表れなのです。
もうひとつ、検査する側として知っておくと役に立つ指摘があります。
同ハンドブックは、保管時のPE袋に使われる滑剤がペレット表面に付着し、そのまま測定すると滑剤のスペクトルが出てしまうことがあると注意を促しています。
だからペレットをカッターで切断し、切断面を測る。
表面に付いているものと、中に入っているものは別、ということです。
サンプルの見た目だけで判断してはいけない理由が、ここにあります。
| 色ブレの現れ方 | 主に疑うべき場所 |
|---|---|
| ロットごとに色調が振れる | 原料の由来と分別の粒度 |
| 狙った色に着色できない | 原料に残った顔料・充填剤 |
| 同一ロット内で色ムラが出る | 混練・撹拌・輸送工程 |
| 表面だけ質感が違う | 保管・梱包時の付着物 |
異臭の原因は「洗い残し」ではなく、樹脂そのものの劣化
次は臭いです。
成形品から異臭がすると、まず「洗浄が甘いのではないか」という話になります。
食品容器由来なら中身の残り、工業系の廃材なら油分。
そう考えるのが自然です。
ところが、公設試験研究機関の分析結果を読むと、話はそう単純ではありませんでした。
岐阜県産業技術センターが研究報告No.5(2011年)に掲載した再資源化プラスチックから発生する臭い成分の分析という論文があります。
臭いのある再生ポリエチレンの不良品と、対照品として良品の再生ポリエチレンを用意し、赤外分光、示差走査熱量測定、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析にかけたものです。
結果が興味深いところでした。
まず融点です。
良品が124.4℃、不良品が125.7℃。
差はほとんどありません。
つまり、材質そのものは同じなのに、片方だけが臭う。
次に、混入物の疑いです。
当初は酢酸ビニルの混入が疑われていましたが、分析の結果、不良品にEVAの混入は認められませんでした。
では何が臭いの正体だったのか。
不良品から検出されたのは、ブタノール、1-ヘキサノール、n-ペンタデカノール、1-ドコサノール、1-ヘプタコサノールといったアルコール類、そして1-プロペン-1,2,3-トリカルボン酸でした。
同論文は、異臭の原因はポリエチレン自体が酸化劣化して生成したアルコール、アルデヒド、カルボン酸類であると考えられる、と結論づけています。
つまり、臭いは外から付いた汚れではなく、樹脂が熱と酸素にさらされた履歴そのものだったわけです。
これは実務的にかなり重要な話だと思います。
「もっとよく洗ってください」と要求しても解決しない臭いがある、ということだからです。
見るべきは洗浄工程ではなく、原料がどれだけ熱履歴を負っているか、そして再生時にどれだけ酸化を抑えられているかになります。
強度低下は「分子が切れたから」ではなかった
3つ目、強度の話です。
ここが一番おもしろい部分でした。
長らく業界の常識とされてきたのは、こういう説明です。
再生材は成形時の熱や使用中の紫外線で高分子鎖が切断されている。
切れた鎖は元に戻らないから、物性は回復不可能である。
だから再生材は本質的に弱い。
私自身、現場でそう説明されてきましたし、疑ったこともありませんでした。
この常識に真っ向から異を唱えたのが、福岡大学の八尾滋氏らによるプラスチックマテリアルリサイクルに関する新しい技術展開という論文です(廃棄物資源循環学会誌 Vol.29 No.2、2018年)。
同論文では、バージンPPと、射出成形のランナー等から作ったプレコンシューマPPの分子物性を比較しています。
数平均分子量はバージンが39,000、再生側が40,700。
重量平均分子量はバージンが171,000、再生側が161,000。
ほぼ同じです。
粘弾性測定でもゲル成分等の不純物は見られず、化学劣化はしていないと確認されました。
それにもかかわらず、210℃で2分間熱プレスして徐冷した薄膜では、再生側だけが著しく脆性を示したのです。
さらに驚くのはこの先でした。
成形条件を250℃・10分・急冷に変えたところ、延性を示すようになっただけでなく、降伏応力も破断応力もバージン品を上回る薄膜になったと報告されています。
同論文は、物性低下の主要因は分子鎖の切断ではなく、結晶ラメラ間のタイモレキュール(結び目分子)が減るという内部構造の変化、すなわち物理劣化だと結論づけています。
そして、物理的な構造の問題であるならば、成形法を選ぶことで回復できる、と。
異物についての記述も見逃せません。
ポリエチレンを約50%近く含み無機異物も多い未選別の容器包装リサイクル樹脂でも、成形法を選べば物性を延性に変えられた、と同論文は報告しています。
破断面には異物との界面にボイドが見られたものの、マトリックス自体の再生が良好にできていれば、異種高分子や異物の存在は脆性の原因とはならないという指摘です。
異物が入っているから弱い、という素朴な理解は、少なくとも一段深掘りする余地があります。
品質を決めているのは、結局どの工程か
ここまでを整理すると、こうなります。
- 色ブレは、原料の由来と選別の精度で決まる
- 臭いは、原料の熱履歴と再生時の酸化の抑え方で決まる
- 強度は、ペレタイズと成形の条件で決まる
3つとも「材料の性質」ではなく「工程の条件」の問題です。
言い換えれば、同じ廃材を持ち込んでも、どこで加工するかで出てくるペレットは変わります。
先ほどの八尾氏らの論文には、ペレタイズ条件の比較データも載っています。
造粒温度200℃で作ったペレット群の引張伸びが平均131.3mmだったのに対し、230℃で作った群は平均157.5mmでした。
同論文は、リサイクル樹脂のペレタイズでは化学劣化を避ける目的で造粒温度を限界まで下げることが多いが、この結果は高めの温度での造粒が効果的であることを示している、と述べています。
現場の常識と逆なのです。
つまり、条件を詰めているかどうかが、そのまま品質差になって出てくる。
だから発注側としては、リサイクル業者を「価格表」で比べるのではなく、「工程表」で比べるべきだと考えています。
たとえば群馬県太田市で廃プラスチックのマテリアルリサイクルを手がける日本保利化成株式会社の資源循環への取り組みをまとめた記事を読むと、この会社の工程設計の考え方がある程度うかがえます。
同社の公式サイトで公開されている情報を見ると、まず入口の基準が明文化されています。
買取できないものとして、素材に異樹脂が付いていて少量のもの、PVCの硬質品、薬品や劇物が付いているものなどが挙げられているのです。
これは品質管理として理にかなっています。
異樹脂と塩ビと薬品は、それぞれ色ブレ、成形時の分解ガス、臭いの原因になり得るものだからです。
入れてから取り除くのではなく、入れない。
工程面では、機械処理に入る前に人の目でチェックして異物や不純物の混入を防ぐこと、破砕の段階で金属残留を除去して8cm程度にし、さらに1.5cm程度まで粉砕することが説明されています。
設備としても洗浄と脱水のライン、押出機はホットカットタイプとストランドタイプの両方を保有しているとのことです。
同社が「有価回収した樹脂の特性や特徴をもとに、再生ペレット化の機械の選定や、ペレタイズ条件を調整・設定する」と説明している点は、先ほどの論文の知見と重なります。
樹脂ごとに条件を変えられる体制があるかどうかは、確認する価値のあるポイントでしょう。
なお、同社は2025年4月に国際的なリサイクル認証であるGlobal Recycled Standard(GRS)を取得しています。
公式サイトの記載では、認証の対象はPCR材で作られたペレットです。
認証は工程と流通の管理体制を第三者が確認する仕組みなので、トレーサビリティを社内で説明する必要がある場合には材料のひとつになります。
発注前に確認しておきたい5つのこと
最後に、私が調達側だったら聞くであろう項目を挙げておきます。
どれも電話やメールで聞ける範囲のことです。
- その原料はどこから来たものか。工場端材か、産業利用済み製品か、家庭系の容器包装か
- 受け入れない材料の基準が決まっているか。異樹脂や塩ビや薬品付着をどう扱っているか
- 樹脂の種類ごとにペレタイズの条件を変えているか。それとも一律か
- 同じ条件で継続供給できる量はどのくらいか。ロットが変わるとき何が変わるか
- サンプルを出してもらえるか。そして、そのサンプルは量産ロットと同じ工程を通ったものか
5番目は特に大事だと思っています。
きれいに作った少量のサンプルと、量産品が別物だったという話は、残念ながら珍しくありません。
そして、可能であれば工場を見に行くことをおすすめします。
選別のヤードがどう整理されているか、原料が種類ごとに分かれて置かれているかは、写真では分からない情報です。
まとめ
再生ペレットの品質について、3つの現象を分解してきました。
色ブレは、原料に残った顔料や充填剤が主な原因です。
産総研の実測では、PS・PETの混入や炭酸カルシウムの残留、カドミウムイエロー由来と考えられる元素の検出が確認されています。
臭いは、洗い残しではなく樹脂そのものの酸化劣化生成物でした。
岐阜県産業技術センターの分析では、材質が同じでも臭いの有無が分かれ、原因物質はアルコールやカルボン酸類だったと報告されています。
強度低下は、分子が切れたからではなく、内部構造が崩れる物理劣化が主要因という研究があります。
成形やペレタイズの条件次第で回復し得るという知見は、再生材への見方を変えるものだと思います。
3つに共通しているのは、品質を決めているのが材料の宿命ではなく、工程の設計だという点です。
だとすれば、再生材の採用可否は「再生材かどうか」ではなく「どこで、どう作られたペレットか」で判断すべきものになります。
2026年4月に改正資源有効利用促進法が施行され、再生材の利用について説明を求められる場面は今後さらに増えていきます。
そのとき頼りになるのは、価格表ではなく、工程を説明できるサプライヤーです。
まずは手元の見積書を1社分だけでいいので、工程の質問リストと突き合わせてみてください。
そこから見えてくるものは、思いのほか多いはずです。